第3回 コラボのウラガワ

2018年9月に全日本空輸株式会社(以下「ANA」)と、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下「JAXA」)がコラボした「宇宙フライト2018」。今回はコラボの企画秘話について、ANAホールディングスの保理江裕己(ほりえゆうき)さんにお話を伺ってきました。

ドローンから宇宙まで、幅広く空を支える航空会社

ーーANAさんってどんな会社なんですか?

ひとことで言うと、航空会社です。安全・快適に飛行機を飛ばすために、パイロットや客室乗務員はもちろん、地上スタッフ、ケータリングスタッフなど、60社ほどの会社で協力しています。飛行機に直接関わる仕事だけではなく、いろいろな面から日々のフライトを支えているんです。

ーー保理江さんは普段どんなお仕事をしているんですか?

私は「デジタル・デザイン・ラボ」という部署に所属して、宇宙事業とドローン事業の事業開発にトライしています。これらは一見、航空事業とかけ離れているようにも聞こえますが、飛行機の高度を上げれば宇宙事業になり、逆に高度を下げればドローン事業になります。1952年、ANAは2機のヘリコプターから始まり、時代の流れに合わせて様々な輸送手段に乗り換え、航空業界を支えてきました。常に新しい輸送手段を探って時代に対応してきたからこそ、今のANAがあるのです。そして、これからの変化にも対応するためには、常に未来の輸送手段を検討する必要があるんです。私たちは、将来的には宇宙分野も守備範囲にしたいと思っています。今後、技術が発展していく中で、宇宙旅行が開発されれば、きっとANAの経験が役に立つと考えるからです。

宇宙を身近に感じてもらうためのコラボ

ーー宇宙と言うと、とても遠い話のようにも聞こえますが。

宇宙旅行が一般化するのはまだ先の話かもしれません。なので、今回は「まずは宇宙を身近に感じてもらいたい」という気持ちでコラボを実施しました。今回の「宇宙フライト」では、JAXAや宇宙日本食を開発している食品メーカーと一緒に9月12日(宇宙の日)から9月20日(空の日)までの間、成田=ヒューストン線でJAXAが認証をしている“宇宙日本食”を機内食としてご提供するなどのキャンペーンを行いました。また、空港のラウンジでは宇宙服や宇宙を飛んだ紙飛行機などの展示も同時に開催しました。

「宇宙フライト」に搭乗しないお客様にも、宇宙を感じてもらうための展示

ーー宇宙食が食べられるんですか?

宇宙食、といってもよくイメージされるようなドライフードではなく、ほぼ地上と同じものを食べることができます。例えば今回ご提供した「宇宙日本食のビーフカレー」は地上のものに比べて少しドロッとして、やや濃い目の味にはなっていますが、地上のカレーとほとんど変わりません。他に、お茶やようかんなども、ほぼそのまま宇宙に持って行っています。そういったことを実際に食べて知ってもらうことで、身近に宇宙を感じてほしかったんです。

こちらが機内食として出された「宇宙食」

カレーのお供である白米はもちろん、山菜おこわやラーメンまで持って行けるらしい

ーーいい意味で「期待を裏切る」ということですね。

「機内」という地球上で一番宇宙に近い空間で、宇宙食を食べてもらい、それがきわめて地上の食事に近いことを知ってもらう。このギャップを皆さんに感じて頂きたかったんです。実際、お客様からも「宇宙を身近に感じた」という言葉をいただきましたし、スタッフも楽しんでいました。各メディアにも取り上げていただき、「宇宙を身近に感じてもらう」「宇宙日本食への理解増進」という目的を達成できたと思います。

ちなみにこの後、ガムとようかんをお土産にもらったが、いたって「普通」の味だった…

ーー他にもコラボを実施されているんですか?

ANAには研究開発部門がありません。なので、技術的な面ではいろいろな企業さんとコラボすることで新たな価値を生み出しています。最近でいうと「赤ちゃんが泣かない!?ヒコーキ」や「乗ると元気になるヒコーキ」を実施しました。「赤ちゃんが泣かない!?ヒコーキ」ではコンビさん、東レさん、NTTさんとコラボをして赤ちゃんの「号泣予測」をしました。機内で赤ちゃんの心拍数などを計測することで、「どんなときに泣くのか」のデータを取りました。

心拍数などから赤ちゃんのご機嫌を教えてくれるアプリ

また、「乗ると元気になるヒコーキ」では、ヘルスケアのテクノロジーやマインドフルネス等を取り入れて、「飛行機に乗ると疲れる」から「飛行機に乗ると元気になる」へ転換することを目指しています。

「乗ると元気になるヒコーキ」企画のひとつ「時差ボケ調整アプリ」は、旅程に合わせ、なるべく時差ボケが出ないように助言をしてくれる

航空業界の最前線に居続けるために

ーー今後の展開をお聞かせください。

宇宙旅行が身近な未来が来た時、その最前線にANAがいたいと思っています。まだ手探りの分野ではありますが、「宇宙フライト」もまた実施できればと思っていますし、今後宇宙関連のコラボを考える企業さんがいらっしゃった時に、ANAの名前が挙がってきたらうれしいですね。

ーーありがとうございました!